住 吉 大 神 の 宮 ・ 部 類 神 ・ 子 神


     

『住吉大社神代記』(天平3年)には住吉大神の宮「九箇処に所在り」とあり、摂津国西成郡(大阪)の住吉大社のほか、神功皇后の伝承に関わる国内外関係地、9ヶ所に住吉大神が祀られていた。
また住吉大社と親しき関係と神威をあらわす部類神として、広田神社など5社、さらに子神として坐摩社ほか周囲神地・神領地などの末社・支社的な神々29社を列挙している。
 [06.11.6~  07.12.19更新]

  (住吉大神の宮 九箇処)
摂津国 住吉大社
(四前)
大阪市住吉区住吉、祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后、「玉野国、渟名椋の長岡の玉出の峡の墨江の御峡に座す大神」
摂津国西成郡 坐摩社
(二前)
いがしり
大阪市中央区久太郎町(渡邊)の坐摩神社
祭神-生井神・福井神・綱長井神・波比岐神・阿須波神
境外社坐摩神社行宮の祭神-豊磐間戸神・奇磐間戸神、二前はこの神か
摂津国菟原郡 (三前) 兵庫県神戸市東灘区の本住吉神社
祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
播磨国賀茂郡 住吉酒見社
(三前 戸三烟)
兵庫県加西市北条の住吉(酒見)神社
祭神-酒見神・底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
長門国豊浦郡 住吉忌宮
(一前)
山口県下関市一の宮町の住吉神社
祭神-住吉大神荒魂・応神天皇・武内宿袮命・神功皇后・建御名方命、「斎宮」とも記される
筑前国那珂郡 住吉社
(三前)
福岡市博多区住吉の住吉神社
祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命、「住吉荒魂社」とも記載される
紀伊国伊都郡  丹生川上天手力男意気続々流住吉大神 和歌山県伊都郡高野町上・下筒香の丹生神社
祭神-丹生都比売命、後裔の社は、和歌山県橋本市の相賀八幡神社
祭神-誉田別命・足仲彦尊・気長足姫尊といわれる、文忌寸材満が祭祀
大唐国一処 住吉大神社
(三前)
任那日本府の地あるいは漢土という、「大唐御社」とも記す、新羅征伐の時の御船の挟抄(かじとり)
新羅国一処 住吉荒魂
(三前)
新羅国、「新羅社」とも記す、新羅征伐の時の御船の挟抄(かじとり)、別に「志賀社」とも記す
 ( 部 類 神 )
摂津国 広田大神 兵庫県西宮市(摂津国武庫郡)大社町の広田神社
祭神-天照大御神の荒御魂(天疎向津媛命)を主神とし、住吉大神(底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命)・誉田別命・比霎大神・息長帯比売命・建御名方富大神・高皇産靈大神を祀る、甲山の南ろくに鎮座
筑前国 橿日廟宮 福岡市東区香椎の香椎宮
祭神-仲哀天皇・神功皇后・応神天皇・住吉大神
筑前国糟屋郡 阿曇社 (三前) 福岡市志賀島の志賀海神社
祭神-底津綿津見神・仲津綿津見神・表津綿津見神
播磨国明石郡 垂水明神 神戸市垂水区宮本町の海(綿津美)神社
祭神-底津綿津見神・中津綿津見神・上津綿津見神
紀伊国名草郡 丹生咩姫神 和歌山県伊都郡かつらぎ町天野の丹生都比売神社とされる
祭神-丹生都比売大神・丹生高野御子大神・大食都比売大神・市杵島比売大神、但し、神代記には名草郡と明記されており、もとは名草郡域にあった別の丹生神社か移動を考える必要あり
 ( 子 神 )
(摂津国西成郡) 座摩神
(二前 一名、為婆照神 いばてりのかみ)
「猪加志利乃神」とも書く、大阪市中央区石町の坐摩神社行宮のあたり、神功皇后の鎮座石という巨石がある
祭神-豊磐間戸神・奇磐間戸神、二前はこの神か
(摂津国住吉郡) 中臣住道神
(須牟地)
大阪市東住吉区住道矢田の中臣須牟地神社
祭神-中臣須牟地神・神須牟地神・須牟地曾禰神・住吉大神
(摂津国住吉郡) 住道神 大阪市住吉区長居西の神須牟地神社
祭神-神産霊大神・手力男神・天児屋根命・天日鷲命・大己貴命・宇賀魂命・少名彦命・素盞鳴命・住吉大神
(摂津国住吉郡) 須牟地曾禰神 堺市蔵前町の須牟地曾根神社か、古くは中臣須牟地神社の北にあったという記録があり、移転したものか
祭神-饒速日命・伊香我色雄命・須牟地曾根
  住道神 大阪市東住吉区湯里の住吉神社と考えられている
祭神-中筒男命
 
件の住道神達は八前なり(天平元年十一月七日、託宣に依り移徒りて、河内国丹治比郡の楯原里に坐す。故、住道里の住道神と号く)
楯原里=大阪市平野区喜連6丁目、旧喜連村に楯原神社
祭神-武甕槌大神・大国主大神・考元天皇・菅原道真・赤留姫命)がある
(摂津国) 赤留比売命神
 (中臣須牟地神・草津神
[かやつのかみ])
大阪市平野区の赤留比売神社。ここは杭全神社の境外摂社となっている。ほかに大阪市中央区高津の高津宮(祭神 仁徳天皇・仲哀天皇・応神天皇・神功皇后・葦姫皇后・履中天皇、摂社祭神-赤留比売命ほか、もと東高津神社の場所か、上町台地上)
(摂津国住吉郡) 船玉神
(今謂ふ 斎祀るは紀国の紀氏神、志麻神、静火神、伊達神の本社なり)
住吉大社摂社、祭神-天鳥船命・猿田彦神 
(摂津国住吉郡) 多米神 大阪市住吉区長居の神須牟地神社の東側
祭神-天日鷲命・倉稲魂神・保食神・大己貴命
  須牟道曾禰神  
(摂津国住吉郡) 止櫛侶伎比売神
ととろきひめ
大阪市住吉区沢之町の止々呂支比売神社
祭神-素盞鳴尊・稲田姫尊
(摂津国住吉郡) 天水分豊浦命神 大阪市住之江区安立に神社跡、あられ松原、今は止々呂支比売神社に遷座されている
祭神-天水分神
(摂津国住吉郡) 奴能太比売命神 大阪市住吉区杉本町に神社跡、今は大依羅神社に合祀されている、
祭神-奴能太比売命神
 
(摂津国住吉郡) 津守安必登神
(二前。海神(わたつみのかみ)と号く)
住吉大社内の摂社大海神社とされる
祭神-豊玉彦命・豊玉姫命 
(摂津国東生郡) 難破生国魂神
(二前)
大阪市天王寺区生魂町の生国魂神社
祭神-生島神・足島神など、上町台地西側に鎮座
(摂津国東生郡) 下照比売神 大阪市東成区東小橋の比売許曽神社
祭神-下照比売命、西側上町台地上の産湯稲荷神社の場所が旧社地という
(摂津国東生郡) 味早雄神 大阪市鶴見区放出東の阿遅速雄神社
祭神-阿遅鋤高日子根命ほか、摂津・河内両国の境に鎮座
  
萱津神 不詳
  長岡神 松葉大記・墨江紀略にも登場、貴船社とされる
(摂津国住吉郡) 大歳神 延喜式の摂津国住吉郡「草津大歳神社」か
草津大歳神社の跡は大阪市住吉区苅田にある、現在は近くの大依羅
(おおよさみ)神社に合祀、
祭神-大歳神
  忍海神 松葉大記所引文安三年八月当社造営日記に忍海社・伎人社の名が登場、所在は未詳。
  伎人神
[くれひとのかみ]
河内国伎人郷、現在の大阪市平野区喜連にあったものか
  片縣神 不詳、堺市の方違神社ではないか?
(播磨国賀胡郡) 阿閇神 兵庫県播磨町本庄の阿閇神社、播磨灘に面す、「賀胡郡阿閇津浜一処」と登場する住吉大社の神領地
祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
(播磨国明石郡) 魚次神
[
なすきのかみ]
兵庫県明石市魚住町の住吉神社、播磨灘に面す「明石郡魚次浜一処」と登場する住吉大社の神領地
祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
(摂津国西成郡) 田蓑嶋(姫)神 大阪市西淀川区佃町の田蓑神社、古くは田蓑嶋であった田蓑嶋神社-住吉神社-田蓑神社へと変遷
祭神-底筒男命・中筒男命・表筒男命・神功皇后
(和泉国大鳥郡) 開速口姫神
[あきはやくちひめのかみ]
堺市甲斐町東の開口(あぐち)神社、祭神-塩土老翁神・素盞鳴神・生国魂神、開口水門姫神社ともいった
  錦刀嶋神 不詳、紀伊国の神かともされるが、大阪湾岸~播磨にかけた「荷前二処・幣帛浜等の本縁」ほかに島の名が登場するので、三国川の河口あたりの島で、そこに祀られた神か
  長柄神 不詳、遣唐貢調使の調物を積む船の泊として「長柄船瀬」として長柄が登場する、大阪市旭区~城東区あたり船瀬に祀られた神か 
  武雄命(神) 不詳、「山河寄さし奉る本記」に垂仁天皇が武内宿祢の父の武雄心命(一に武猪心命)を遣わせて二上葛城の山々などを住吉大神に寄せさせた、この武雄心命のことか、阿備の柏原社(和歌山市相坂の安原八幡神社あたりか)で斎祀るとある
 いこまかんなびの杜